(そら)が客席に戻るとその顔をみたリッカとエマが少し目を丸くしていた。

「随分遅かったけど、あんた……その顔どうしたの?」

「え!?な、なにが?」

「天、顔……真っ赤」

 リッカとエマに指摘され天は慌てる。先程のやり取り、葵の声がまだ耳に残っていて、思い出すだけで顔が熱くなる。

「な、なんでもないよ!あ、ほら決勝だよ!」

 天が2階席から前方を指差す。葵たち剣道部は凛々しく佇み、そこに現れた対戦校にリッカとエマは目をパチクリさせた。

「……あの学校って確か」

「うん、王子くんがいるとこだね」

 響たちの所属する学校の出現に2人は顔を見合わせる。そんな様子に天は首を傾げた。

「どうしたの?」

 2人が何か言う前に団体戦が始まり、先鋒の2人が前に出る。その代表に天は驚いて声を上げた。

「え!安岐くん!?」

 そこには一際小さい背丈の男子がいて、面を被っていても葵だとすぐにわかる。決勝なのにこんな早く出番なんだと天が思っていると、リッカとエマが口を揃えて対戦相手の名前を言った。

「あれって、王子くんだよね?」

「あっちサイドの女子がキャーキャー騒いでるから確実」

「ねえ、王子くんって誰?」

「あんた知らないの?王子っていったら霞ヶ浦響のことよ」

「え!霞ヶ浦さんって、そんなあだ名あるの?」

「結構有名だよね?他校のうちらも知ってるくらいだし」

 エマの言葉に頷きリッカは驚いている天に詳しく説明をする。

「チャラついてそうな見た目で剣道の腕も強い。性格も軽いとかなんとか。だから女子が放っておかないらしいわよ」

「ファンサも手慣れてるしね」

 エマの言う通り響は女子達の声援に応えるように手を振っている。そのためキャーという声が大きくなっていた。

「めっちゃ人気じゃん」