「あ、あはは。安岐くんも闘争心バチバチだね。勝者の景品みたいになってる私……うんうん、恋愛の鉄板ネタ」

 胸がドキドキドキと早くなるのを感じて、天はそんな風な言葉を返した。葵は天の様子を見てふっと微笑む。葵がたまに見せる、男の子の色気が漂う笑い方。天はそれにまた胸が高鳴る。何か言わなければと思うが、天は言葉にできない。そんな天を葵は見つめる。

「俺が勝ったら、ご褒美をくださいね」

「え?ご褒美?」

 葵の言葉に天は目をパチクリさせる。そんなの、いったい何を……と首を傾げるが、葵の視線が熱を孕んでいて、天はそれに呑まれる。見つめられる恥ずかしさに、天の顔がカアッと赤くなった。

「あ!安岐くん!私、今絶対変な顔してる!」

「どうしてですか?」

「だ、だって……」

 天は真っ赤になりながら口ごもる。そんな様子に葵は優しく微笑むと、天の耳元で囁いた。


「その顔、めっちゃそそるなぁ」

 葵の言葉に、天は全身が熱くなるのを感じた。これ以上ここにいたらおかしくなりそうと思った天は、慌てて葵に手を振ってその場を離れる。

「安岐くんっ……が、頑張って!」


 天はそう伝えるだけで精一杯だった。その言葉の意味を理解できてないほど天は浅はかではない。葵の勝利を望んでるのは嘘じゃない。ご褒美を願う葵の視線を思い出し、これは破壊的なキュンだと天は思うのだった。


 そんな天を見送りながら、葵は響との対戦に向けて気合いを入れる。

 ーー赤音さんに手出しはさせない……絶対に。

 それぞれの思惑が飛び交う中、団体の決勝戦が始まろうとしていた。