伊丹のその言葉に葵は素直にお礼を言う。そんな葵に伊丹はまた笑って言った。

「ま、でもおまえもあんな顔できるんだな」

「あんな顔?」

「自販機のところで声かけてきたじゃん。あん時のおまえの顔、やばかったぜ?」

「……どんな顔してたんですか、俺は」

 葵のその質問に伊丹はその時の様子を思い出す。そして、ニヤリと笑って言った。

「アレだよ。顰めっ面で嫉妬に狂った不快な顔」

「はあ?」

 伊丹の言葉に葵は怪訝そうに眉を寄せる。その様子に伊丹は苦笑いして言った。

「自覚なしかよ……」


 天は葵の想いなど一ミリも気づかず、葵は自分がどれだけ天に想いを寄せてるのか、その大きさも理解していない。そんな2人の今後を思って伊丹はもう一度友達である葵を憐れむ。お返しに、鋭い眼光で睨まれたのはいうまでもない。