「よ!赤音と話はできたのか?」

「伊丹には関係ないでしょう」

「こっわ、棘あるなぁ。それにしても赤音って初めて喋ったけど、リアクションいいよな。揶揄いがいがある」

 伊丹はそう言って思い出し笑いをする。葵はそれをキッと睨むが、それには気づかず話を続けた。

「あと意外と素直だな。揶揄われてるの気づいてないみたいで面白かった」

「伊丹……あんまり調子に乗ってると……」

「あれ?もしかして安岐、赤音のことそんなにお気に入りなのか?」

 葵の言葉を遮るようにニヤニヤしながら伊丹が言った。その言葉に葵は少し目を見張る。そしてすぐにいつもの笑顔を浮かべた。

「うるさいですよ」

「んー?よく聞こえないなぁ?」

「伊丹の耳はお飾りですか?」

「いやー、ノイズがなー。おっかしいなー?」

 あくまで葵が認めるまで伊丹は聞こえないふりをする。それをわかっててあえて答えなかった葵だったが、ため息を吐くと、声のトーンを下げイラついた顔をみせる。

「うっさいねんボケ。黙っとけや」

「おお、怖っ。キャラ崩壊してんぞ」

「ほっとけや」

 葵が珍しくキレ気味でそう言うと、伊丹はアハハと笑って、その後に憐れむような視線を葵に向ける。

「でも、おまえの気持ち一ミリも届いてなくて逆に、笑えた。やっぱあれだな……手強いな」

 うんうんと頷く伊丹に葵はもう一度深くため息を吐くと、釘を刺す。

「赤音さんに変なこと言わないでくださいね」

「言うわけないだろ、ダチの邪魔するわけないじゃんか。それに言ったところで伝わらないだろ赤音には」

「そうです。あなたはそんなことしない。それがわかるのがイラつくんです。伊丹のくせに」

「ひっでぇ!」

 葵の言葉に伊丹はカラカラと笑う。そして、ふと真面目な顔になる。


「まあでも……安岐が本気なら俺も応援するわ」

「……ありがとうございます」