葵はそれを圧のある顔で見送っていたが、天が自分を見ていることに気づくといつもの優しい笑顔へと戻るのだった。

「赤音さん、こんにちは」

「あ……うん!こんにちは!」

 天は先程と今の雰囲気の変わりように戸惑いつつ、なんとか挨拶を返す。そんな様子に葵は苦笑いして口を開いた。

「そんなに怯えないでくださいよ、少し傷つきます」

「や、違うよ。怯えるとかじゃなくて、なんか……安岐くんが」

 天は一度言葉を飲み込み、葵の顔を見る。言っていいのかなと思いつつも、葵が天の言葉を待つ姿勢でいるのがわかったので、思い切って口を開いた。

「安岐くんが、変な様子だったから……どうしたのかなって思って」

 天の言葉に葵はわずかに目を開く。そして、ゆっくりと息を吐くといつものように微笑んで言う。

「赤音さんは鋭いですね」

「え!?や、そんなことは……」

 葵の言葉に天は慌てふためくが、その反応に今度は葵が目を丸くした。しかしすぐにクスクスと笑う。

「すみません……なんだか面白くて」

「……あ!もしかして、また揶揄った?」

「さあ?どうでしょう?」

 そんな葵の様子に天は言い返したかったが、葵が楽しそうに笑うのでまあいいかと思った。そんな葵はふと、天の持っている飲み物が目に入り、それを指差した。

「赤音さんはそれ、好きなんですか?」

「ああ……これ?」

 葵の言葉に天は自分が手にしているものを見る。それは先程買ったいちごミルクだった。

「うん、小説関係で頭使う時はこれよく飲むかな。ほら、糖分で頭回す的な?」

「なるほど、それはいい考えですね」

 葵は天の言葉に納得すると、自販機にお金を入れてボタンを押す。そして自分も飲み物を手にした。

「安岐くんはレモンティーなんだね、なんか……っぽい」