「おまえがパトロールもどきするから皆、足音聞こえただけで反応するらしいぞ。アカネゾラ警棒とかいって」

「ええ!!?」


 伊丹は悪気なくカラカラと笑って話すが、天は驚きと羞恥で気が狂いそうだった。そこまで自分の行動が広まってるとは思いもしなかったからだ。
 そんな天を気にせず伊丹は自然と話を続ける。


「で、おまえは何してんの?飲み物?」

「あ、うん!喉が渇いちゃって」

 天はテンパりつつもそう答えると、財布を取り出す。そして、いちごミルクのボタンを押してそれを取ると、もう用はないので足早にその場を去ろうとしたが、伊丹はわざとなのか偶然なのか話をやめない。

「何回か部活見学にきてたよな?それも、あの安岐のエスコートで」

「エスコート?いやいや、あれは偶然お誘いされただけで」

「こっちじゃあの安岐が女子連れてきたって大騒ぎだったぜ」

 伊丹は笑いながら天に言う。それは揶揄いの意味が込められていたので、天は苦笑いを返した。

「なんかごめんね。お騒がせしまして」

「いや、全然いいって。まあ安岐も普段はああやって自分から女子と話してる印象ないもんだからみんな驚いてただけで」

 笑いながらそう言う伊丹の言葉に嘘はないと感じ取って天は胸を撫で下ろす。しかし同時に疑問が浮かんだので質問する。

「そうなんだ……安岐くん優しいからみんなにそうなんだとばっかり」

 天の何気なく呟いた言葉に伊丹は「あ〜……」となんとも言えない表情をする。

「まあ、それは……うん、優しいのは優しいな」

 伊丹が言葉を濁したことに天は首を傾げる。その様子を見て伊丹は苦笑いをした。そして少し考え込んだ後、口を開いた。

「ま、安岐のことは置いといてさ。今度は俺の輝いてる姿も見に来てくれよ。安岐よりもかっこいいぞ」

「え?」