葵の発言に天は慌てる。客人を床に寝かせるなんてできないと意地になったのだ。そんな天に葵は提案する。

「では、一緒に寝ますか?」

 そんな葵の提案に天は固まる。その反応を見て葵はクスッと笑う。天は察した。これは揶揄われていると。なんだか無性にその余裕そうな微笑みを崩したくなった天は、葵の腕を引っ張る。そして自分のベッドへ突き飛ばした。


「うわっ」

 突然のことに驚く葵だったが、その後の天の行動で目を丸くする。なんと、天もベッドに入ってきたのだ。隣同士、肌が触れ合う距離。葵の頬が赤くなったのを見て天は勝ったとニヤリと笑みを浮かべた。

「安岐くんのお望み通りにしたけど、どう?」

 勝ち誇る天に葵は仕返しされたことに気づく。天にとってそれ以上でもそれ以下でもない今の状況に1人慌てるのも違うかと思い、ここは自分が折れるべきだなと素直に思った。

「そうですね……赤音さんの言う通り、一緒に寝ましょうか」

「え!あ、ああ……はい」

 まさかの葵の言葉に天は困惑したが、自分からこの状況を作った為に後にはひけず頷く。そして電気を消して2人は横になった。お互い仰向け。顔だけ少し横に向け、言葉を交わす。

「安岐くん、おやすみ」

「おやすみなさい、赤音さん」

 そう言ってから少しの沈黙の後、先に口を開いたのは葵だった。

「あの、赤音さんは俺のことどう思ってます?」

 そんな葵の質問に天は戸惑うが正直に答えた。

「え?友達だけど……」

「……貴重なキュンネタ提供の?」

「安岐くん言い方トゲある」

「すみません、つい」

 どちらともなく笑って、少し落ち着いた頃に葵はもう一度口を開いた。

「俺も赤音さんが大切ですよ」

「……ありがと、安岐くん。私男子の友達っていないから嬉しい」

 天は純粋にそう思い、葵に笑顔で伝えた。その言葉と笑顔に葵は少し眉を下げて微笑む。