「赤音さんのことを知れているからですよ。こうして俺の前でも隠さずにいてくれるようになったなと感慨深くて」

「大袈裟だなぁ……自分の言動、ネタにされてるんだよ?嫌じゃない?」

 天は今更すぎる質問を葵にぶつける。しかし、葵は天の予想に反して、平然として答えた。

「別に大丈夫です。俺の言動で赤音さんが俺に興味持ってくれるなら嬉しいですし」

 その回答に天はドキッとする。葵が向けてくる微笑みがあまりにも優しかったからだ。思わず見惚れると、それに気づいた葵が言う。

「どうかしましたか?」

「ううん……今のも最高のキュンなのでメモるね」

 そう言ってから天はメモをとるためにスマホへ視線を戻した。しかしそれはすぐに終わることとなる。葵が突然天の耳に触れてきたからだ。突然のことに天は固まり、その様子に葵は少し意地悪をする。

「今もキュンってしてます?ドキドキの方ですか?」

「い、いや?その……ちょっとお触りは、困る」

「ピュアじゃなくなるからですか?」

 葵の言葉に天は勢いよく頷く。それを見て葵は小さく笑うと耳から手を離した。そして顔を近づけて、唇が触れるか触れないかの距離で、囁く。

「素直になり、もっとドキドキさせたるで?」

 葵の言葉に天は顔が熱くなるのを感じた。そしてそのまま勢いよく立ち上がり、葵に告げる。

「今のはイエロー!イエローカード!2枚で退場です!」

「冗談ですよ。すみません、やりすぎましたね」

 クスクスと笑う葵に天も力なく笑う。一気にどっと疲れたなと思い、もう寝ようという流れになった。


 しかしここで問題が発生する。布団がない。そう、来客なんて普段こないからベッドしかないのだ。天は葵と顔を見合わせる。

そして同時に同じことを考えた。

「俺は床で大丈夫ですので」

「いやいや!お客さんがベッドで寝なよ!」