「残念です。あの番組がついてたら赤音さんの可愛い姿がもっと見られたのに」

「……やっぱり安岐くんってSだよね。そんな無害そうな笑顔振り撒いておいて。詐欺レベル」

「ははっ酷い言われようですね」

 葵は天の言葉に笑ったあと、急に真剣な表情になる。その変化に天はドキッとしたが、視線を逸らして気のせいかと思うことにした。

「赤音さん」

「な……なに?」

「俺ってそんなに無害そうに見えるんですかね?俺は結構赤音さんにアピールしてるつもりなんですけど……」


 葵のその言葉に天は動揺する。アピール?それは一体どういう意味?とキュンを得ようとしているのに逆に困惑するばかりになる。このままだとまた葵のペースになると天は思い、この空気も変えたくてあえて違う話題を振ることにした。

「そ、そーいえば!もうこんな時間だね!安岐くんどうする?何時に帰る?泊まってく?」

 その話題のチョイスは火に油だったのだが、本人は気づかなかった。

「赤音さん、それ……素でしとるん?」

「へ?なに、が?」

 天は葵の関西弁が出たことに意識が持ってかれて彼の言葉の意味を理解できずにいた。そんな天に葵は呆れつつ、深くため息を吐いて、少し意地悪く微笑む。

「赤音さんって、時々天然やね」

 葵の言葉に天はハッとする。また葵に揶揄われたと思ったからだ。先程から彼の言動に翻弄されっぱなしである。今日はこれ以上好きにさせてはいけないと天は意を決して口を開いた。

「あ……安岐くん!私で遊ぶのも大概にしてよ!」

「遊んでへんよ?」

「嘘だよ!絶対楽しんでるでしょ?私のこと揶揄ってさ……」

 天がそう言うと、葵は少し考えるようにしてから天を塞ぐようにソファに腕をついて、彼女を見下ろす。その行動に天は驚きと同時に少し恐怖を感じた。葵の目がどこか熱を孕んでいるように見えたからだ。

「あ……安岐くん?」