そんな言葉に天の胸が高鳴るも、すぐに気持ちを切り替える。こんなことではいけないと思うから。葵に迷惑をかけないようにしなくてはと心に誓うのだった。だがまたしてもテレビのホラー番組が天をびびらせ、情けない声を上げることに。そしてまた葵に心配されるのであった。

『赤音さん。正直に話してください』

「いや、だから」

『はい、逃げない』

 葵の声が心配を含みつつも少し怒ったように聞こえる。天はぐっと言葉に詰まり、深く息を吐く。そして渋々話し出した。

「ホラー番組を観たの」

『はい』

「それで、びっくりしちゃって……GWは1人で家にいるから、つい怖くなって……」

『……そうですか』

 葵は天の言葉に少し間を置いてから返事をする。その反応に天は不安になるが、葵はそのまま言葉を続けた。

『では、今から行きますね』

「えっ?」

 突然のことに驚く天だったが、すぐに電話が切れた。何が?何て?天の頭は追いつかずぐるぐるとするが、ホラー番組の音でまたしても現実に引き戻された。


 数10分後、インターホンが鳴る。それだけでビクッとしてしまう天。こんな時間に?誰?……まさかと思いモニターを見ると葵の姿が映っていた。

「安岐くん!?」

 天は驚いてすぐに玄関へ向かう。鍵とチェーンを解除して扉を開けるとそこには葵が立っていた。

「こんばんは」

「どうして来たの!?」


 天は混乱して思わず叫んだ。その声に驚いたのか、一瞬目を見開いたがすぐに笑顔に戻る葵。そして静かにという風に人差し指を唇へ持っていく動作をする。それを見てしまったからか、何も言えずますます混乱する天だったが葵に部屋の中に押し込まれてしまう。
 玄関を入ったところで2人で向かい合う形になった。天は目を泳がせながらも必死に言葉を紡ごうとした。

「あ、安岐くん?えっと……その……」

「はい?」