葵の真っ直ぐさは今の天には眩しすぎる。それが余計に悔しい。

「……安岐くんって変な人だよね」

「どうしてです?」

「だって私みたいな奴にこんなに肩入れするなんて、マイナーすぎる。なかなかいないよ。レア、激レア、SSR」

 あんなキラキラ女子を差し置いて葵が追ってきてくれたという事実に喜んでしまった自分がいたことを思いだし天は俯く。そんな天を見て葵は小さく笑う。

「それは光栄ですね」

「なんでよ」

 そんな葵の反応に思わず顔をあげて睨みつけてしまう天。葵はふっと口元に笑みを浮かべる。

「俺だけが、赤音さんの魅力に気づいてるってことですから」

「は?」

「自信を持ってください。あなたは魅力的な人ですよ」

 葵のその言葉を聞くと天は頭が真っ白になる。そして顔が一気に熱くなるのを感じた。そんな天を見て、葵はくくっとおかしそうに笑う。

「……な、何それ!安岐くんってやっぱり変だよ!」

 そんな天の言葉に葵はまた笑ったのだった。天はこの状況にいたたまれず、葵から逃れようと必死に手を振りほどこうとした。だが振り解けない。

「安岐くん離して」

「嫌です」

「どうしてよ!?もう、わけわかんない。私もう帰りた……」

 そう言いかけた天を遮って葵が言う。それはとても真っ直ぐな声で。

「……もう少し、俺とおって」

 ーー反則だ。そんな声で言われてしまっては……私は……。天は思わず手を掴まれたまま固まってしまう。すると葵がふっと微笑んだのがわかった。そのままゆっくり掴まれる手を上にあげられる。視界に入る、葵の手首。そこにある、リストバンド。天がプレゼントしたものだ。

「あ……」

「こうやって普段は誰にも見つからないものを暴くのは、背徳感があって良いですね」

「う……」