天は自分で何言ってんだとツッコミたかったが、口が閉じない。というか、話の終着点がわからず焦っていた。言いたいこともうまくまとまらず、こんなの作家として恥ずべきこと。

「いつも声をかけてくれるし、安岐くんと話してると楽しいし、滾るし?でも私ばっかり安岐くん独占していいのかなーなんて、そんな考えすらおこがましいというか……」


「俺は、ただ。話しかけるのも、一緒にいるのも俺がそうしたいなって思っているからしているだけです。それに……」

 そんな天の考えなど知らず、葵は真っ直ぐ天を見つめる。その瞳がキラキラしていて吸い込まれそうになる。天は息を呑んだ。

「赤音さんが喜んでくれたらいいなって、そう思っただけですよ」


 その言葉に天の顔は真っ赤に染まる。そんな反応に葵も慌てて視線を逸らした。とりあえず並んで歩く。しかし2人の間に気まずい沈黙が流れる。自転車のカラカラとした音が鳴り響く中、先に口を開いたのは天の方だった。

「安岐くんはさ……いつも私の心を乱すよね」

「……すみません?」

「なんなの?Sなの?意地悪なの?私が安岐くんからキュンをいただいてネタにしてるから仕返ししてるの?」

「ネタ?」

「確かに安岐くんはキュンの達人だよ。きみ以上に恋愛小説のセリフ似合いそうな人見たことないよ。それにしたってさ!やりすぎなの!そんなに提供されてもお腹いっぱいで胸焼け起こすから!」

「はぁ、すみません?」

 葵は首を傾げる。そんな姿に天はため息をつくと、彼に向き直る。思わず早口で言ってしまった己の恥ずかしさと小説のキャラにしてるってバレてないかなという不安がごちゃごちゃと混ざりカオス状態になる。

「えと……まあ、そんな感じで。今後は控えめにしていただけたら、大変助かります。ああ!でもゼロは困るっ、多少は欲しい!」

「ええと……」