月曜日。午前の授業が終わり昼休みになり、(そら)も友達とお弁当を食べる。数少ない貴重な天の友人2人は、どちらもよく天の性格を理解している。
 1人は中学からの友人でリーダーシップがある、ちゃきちゃきタイプのリッカ。もう1人は高校からの友人で大人っぽく落ち着いているクールタイプのエマ。タイプでいえば、自分はマイペース呑気ヲタクタイプなのだろうなと天は思った。

「それで、天!あんた最近どうしたのよ!」

 リッカが少し興奮気味に問い詰めてくる。隣のエマと共に天は目を合わせて首を傾げた。

「リッカはいったい何を興奮してるの?推しでもできた?」

「違うわ!そうじゃなくて、あんた最近の小説どうしたのよ、めっちゃリアルキュンさせてくるじゃないの!」

「まぁじで!?」

 天は自分が小説をネットに投稿していることは隠している。しかしこの友人2人は別だ。後知っているのは文芸部の仲間くらいだろう。とにかく、そんな天の小説を読んだリッカからの感想に天は舞い上がる。

「キュンきた?どこらへんで?」

「部活の時の色気ある笑みとか、急な方言でちゃうとことか!」

「あ、方言のとこよかったよね。私もドキッときた」

「エマちゃんも!まーじーか!うれしいいい!」

 天はガッツポーズをして、机に伏したまま足をばたつかせる。

「どうしたの?何か心境の変化でもあった?」

 エマに聞かれて天は言葉に詰まる。実在している葵とのことを小説にしているなんて、そんなこと言えるはずもない。そもそも友人2人にはまだ葵の名前は伝えていなかったのだ。だから素直に言えなかったが、リッカにはバレているようでニヤニヤした顔を向けられる。

「何がって……何だろなぁ」

「これはとうとうリアル恋したわね」

「そんなのしてない……はず」

「言い切れないのが怪しい」