そう宣言すれば葵はにっこり笑うので天も釣られて笑う。そうしてしばらく2人は笑い合っていたが、いつまでもこうしているわけにはいかないので、手を振ってサヨナラをした。



 夜、ベッドの上で天は今日のことを思い出す。初めて男の子とお出かけ、デートというものを経験できた喜び。これは小説にリアリティが増すと自身のスキルアップにニヤニヤしていた。

 その時、スマホが鳴った。着信?天は画面に浮かぶ名前を見て驚き思わず切ってしまう。

 いけない!と思いどうしようと悩むとまたすぐに電話がかかってきた。今度はしっかりと通話ボタンを押す。

『こんばんは、赤音さん』

「安岐くん?」

 電話の相手は葵だった。まさか今日電話がくるとは思わず天は困惑しつつ、少しドキドキしていた。

『切りましたね?』

「い、いやぁ、あれは不可抗力というかなんというか……」

『もしかして、電話嫌でした?』

「それはない!」

 天は思わず言ってしまった言葉に恥ずかしくなる。葵も驚いているのか少し沈黙が続いたが、クスクス笑う声が聞こえてきた。

『赤音さん、かわええ』

「っ!」

『顔真っ赤ですね?想像できます』

「あ、安岐くん!揶揄わないでよ」

 そんな会話に2人は笑い合う。そして、天は何か用があるのかと葵に問いかけた。

「何かあった?」

『はい。おやすみなさいと言いたくて』

「え、それだけ?」

 天は驚きの声をあげた。まさかそんな用で電話してきたのか?と天は葵に聞くが、葵ははいと返事をした。

『寝る前に、赤音さんの声が聞きたかったんです』

「そ、そうなんだ……」

『赤音さん、もしかして……迷惑でした?』

 少し不安そうな声で言う葵に天は慌てて否定する。

「そんなことないよ!ただちょっと驚いただけで」

 そう答えるとまたクスクス笑う声が聞こえた。そして葵は言うのだ。