天はハッとして顔をあげる。いけない、今は葵とのデート中だ。それを思い出させて頬を軽く叩くと笑顔を作る。

「安岐くん、次はどこ行く?」

「そうですね……」



 その後も2人はブラブラと散策を楽しみ、夕方になった。天はあっという間だったなと少し寂しい気持ちもありつつ、何故寂しいのかその理由には気づかないでいた。


「送ってくれてありがとう安岐くん」

「いえ、こちらこそ今日はありがとうございました」

 今日も葵は天を家の前まで送り、2人は言葉を交わす。なんだか今日は離れ難いなと天は思い、自分でもよくわからないまま困っていた。

「赤音さん?」

「あ、いや……なんか、今日楽しかったから寂しいなーって」

 本当に天に他意はない。しかし葵にとってはなかなかにぐっとくる一言だった。

「なんでだろ。いつもは平気なのにな」

 天はうーんと悩む。確かに明日から土日に入り、次に学校で会うのは月曜日だ。以前なら対して気にしてなかったその時間がもどかしいのか?と不思議がると葵が口を開いた。

「連絡ってしてもいいですか?」

「へ?メッセのこと?いい、けど」

「いえ、電話も」

「電話!?」

「俺も、赤音さんの声が聞けないのは寂しいので」

 そんなことをさらっと笑顔で言うものだから、天はドキッとしてしまう。葵のその笑顔に弱いなと思いつつ、頷いた。

「いい、よ?」

「言質とりましたよ?着拒とかやめてくださいね」

「そんなことしないよ!え、安岐くん私のこと何だと思ってるの?」

「赤音さん逃亡癖があるので一応」

 確かに追われると本能的に逃げてしまうと天は自覚していた。葵に最初に会った時も逃げようとしてバランスを崩したのだから。

「あ、安岐くんからの連絡はちゃんと返すよ」

「ほんまに?」

「逃げません!」