天は普通体型、中肉中背だ。しかし他の女子に比べ背が高いのもあり、並んだ時の体格差など本人は気にしていた。太りたくない、だからこそ食べ過ぎ注意なのである。そう話せば葵はポカンとした顔をすると急に笑い出した。そして一通り笑ったあとに口を開く。

「赤音さん、可愛い悩みですね」

「笑い事じゃないのに……」

「こんなの食べたくらいで太るなんて思いませんし、赤音さんは全然太ってないですよ」

「安岐くん、優しいね」

 天は苦笑した。葵が本心でいっているのはわかる。しかし女の子にとってその言葉はとてもありがたいものなのだ。少し照れる天に葵は続けていう。

「それじゃあ今日は半分こしませんか?それならそんなに気にならないでしょう?」

「え、でも……」

「大丈夫です。俺も食べるんで」

 葵はそう言うと店員を呼んで注文をした。パンケーキが運ばれてくると天に差し出してにっこりと笑う。

「俺の誕生日祝いなので、一緒に食べてくれませんか?」

「……安岐くんってモテるよね」

「はい?」

 急に話題をふられた葵は間抜けな声を出すが、天は気にした様子もなく続ける。

「こんな風に女の子の喜びそうなことをサラッというとか……そういうとこだよ?これはネタとして使える」

 最後の方はブツブツと小さくて葵には聞こえていないが、天は本当にそう思っていた。スマホでさくっとメモ書きしようと打ち込むと、目の前の葵は何か思いついたのか切り分けたパンケーキをフォークに刺し、天の口元へ差し出す。

「ほら、赤音さん」

「え……」

 スマホを見ている隙になにが起きたと戸惑う天。これはいわゆる……あーんっというやつか?と目をぱちくりさせると葵は笑顔で促す。

「食べてください」