「え!安岐くんもう誕生日すぎたの?」

「はい、俺4月26日が誕生日なので」

 あれから(そら)は葵とメッセージのやりとりは、とくにしていなかった。天としても何て返せばいいのかわからないしそれだけで一日中悩みそうなのでこないことは助かっている。
 その代わり、こうして対面的に会うことは増えてきた。慣れとは不思議なもので、最初は目を合わせるのも大変だったが今では少しは普通に話せていると天は思っていた。もちろん天は恋愛小説のネタのために接点をもとうとしているのだが、葵も嫌な顔せず話相手になってくれているので安堵する。
 
 
 今も部活の休憩時間に葵が覗いていた天に気づいて声をかけにきてくれたのだ。そうして、誕生日の話題に。

「そうなんだ。一昨日だったんだねぇ」

「はい」

 葵は少し気まずそうにしている。そんな表情をみて天は自分が何かまずいことを聞いたのかと思った。そして考える。彼はきっとモテるだろう、知らないが。もしかしたら彼女がいるのかもしれない、知らないが。それなら、こんな風に自分と話してていいのか?彼女が気を悪くしないのか?誕生日もそんな人と既にパーリーナイトしていて、恥ずかしくて触れられたくないのでは?と。

 そんな天の思考を読み取ったのか、葵は慌てて訂正する。

「あ、彼女とかいないですからね」

「え?なんで私の思考わかったの?」

「それは、わかります。もう一度言いますけど、彼女はいません。俺モテませんし」

「そう?安岐くんかっこいいよ?」

 天はさらっと思ったままに口にした。葵はその言葉に驚いた。

「赤音さん……」

 葵の困ったような顔に天はハッとした。そうだ自分は今小説のネタのために接点を持とうとしたところだった!と。これはいいネタになるかもしれないと、改めて葵を見るが彼の表情は困り顔のままである。