そう言って揶揄う葵に天は降参するしかなかった。真っ赤にした顔で少し恨めしそうに葵をジト目で見る。

「安岐くんの意地悪」

「俺は意地悪やなくて、天が好きなだけやで?」

「っ!もう!」

「あ、怒った顔もかわええな」

 そう言って葵は笑う。その笑顔にキュンとしてしまう天はもう、どうしようもない。

「……安岐くんのバカ」

「はいはい」

 そんなやりとりをしながら二人は駅に向かう。結ばれた二人の恋はまだ始まったばかり。これからどんな風に想いを紡ぎ、変わっていくのか……それを知るのは二人と、この恋物語を読む読者だけ。


「安岐くん」

「ん?」

「……好き」

「ん、俺もやで」

 素直に好きと想いを伝えられることに天は喜び、葵と共に微笑む。この時間はかけがえのないもの。天は、今ある幸せを胸に刻んで、葵の隣を歩いた。