「くううっ、関西弁ずるいよね。もう断れないじゃん」

「アホやなほんま」

「え、安岐くんちょっとアホとか酷くない?私のこと、す、好きなんだよね?」

「は?好きやし。好きな子ほどいじめたいっていうやん」

「それは小学生までだよ!もう、安岐くんってば……」

 そんな天に葵はそっと近づくと天の後頭部をぐっと引き寄せて耳元で囁く。

「あかん?」

 その声があまりにも甘くて、色っぽくて。天は耳を抑えて顔を真っ赤にする。そんな天の反応が可愛くて、葵はまた笑ったのだった。

「さて、ほな一緒帰ろか」

「え、自主練いいの?」

「ええねん。天とおったら集中できんし」

 そう言って葵は口元に弧を描くと、天の頭をぽんぽんと撫でて着替えに行く。天は今の状況が夢なのではと頬をつねったが、痛かった。

「夢じゃない……マジか……」

 天はその後着替え終わり出てきた葵に不思議そうな顔をされた。


 二人で駅までの道のりを歩く。葵は自転車を押して、その隣に天はいる。何回も帰ったことがあるのに、何故かドキドキしてしまう天。そういえばと疑問に思っていることを葵に尋ねる。

「ねぇ、安岐くん」

「ん?なに?」

「私たちって、その……付き合うの?」

 天の言葉に葵は呆れたような顔をして、大きなため息をつく。

「あんなことまでして逆に付き合わへんとか、あるわけないやん」

「……だよね」

「まぁ、天が嫌ならええよ?俺としてはこのままでも楽しいし。天が降参するまで攻めるだけやし?」

 そう言って葵は意地悪く笑う。その笑みにドキッとした天だったが、負けじと葵の服の裾を掴んだ。

「嫌じゃない!……です」

「なんで敬語なん」

「だ、だって……」

 もじもじとする天に葵は笑う。そして下から顔を覗き込んで、ニヤリと笑った。

「背が低いのも天が相手やと便利やな。俯いても顔わかるし」