葵が顔を歪める。天は初めて聞く葵の想いに胸が震えた。ずっと、こんな風に見ていてくれていたのかと、信じられなくて……それでも、嬉しくて。天の視線に気づいた葵は、ふっと笑った。たまに見せる色気のある笑み。天はそれにドキッとした。

「でも、もう遠慮なんてしません。赤音さん……好きです。ずっと、俺にはあなただけです。赤音さんが可愛くて仕方がないんです。俺のそばに、いてください」

 そう言って葵は天を抱きしめた。驚く天だったが、恐る恐る背に手を回して抱きしめ返す。背は低いのに自分とは違う広い背中。華奢ではなく、筋肉がしっかりついたその背中に男の子を感じた。そして体に響く心音も速い鼓動も、全部が愛おしいと天は思う。

「安岐くん……私もね、安岐くんが大好きだよ」

 そう言葉にするだけでドキドキした。でもちゃんと伝えたくて、ぎゅっと抱きしめる力を強くする。すると葵の腕に力がこもり強く抱きしめられた。

「……ほんまに?」

 小さく聞こえた葵の声は、関西弁。素で喋る時の、言葉遣いに天はキュンとなる。そんな天の様子がわかるのか、葵はそのまま話を続けた。

「ほんまに、好き?」

「……うん」

「じゃあ……証明してや」

 そう言って葵は体を離すと天の手を引きバランスを崩させ自分の胸に抱き寄せる。そのまま座ると身長差がなくなり、天を見下ろす葵。天は少し顔を上げるとその距離の近さと顔の近さにドキドキする。

「あ、安岐くん……?」

「俺はもう遠慮しないって言ったやろ?だから……」

 そう言うと葵の顔がどんどん近づいてきて、天は思わず目を瞑る。すると額同士がくっついた。その感触に恐る恐る目を開けると、そこには悪戯っぽく笑う葵の顔がある。

「なに?キスされると思ったん?かわええなぁ、天は」

「〜〜っ!?」