そう、これはネタになる!と天の頭の中はそれでいっぱいだった。忘れないうちにスマホのメモを起動して流れを書いていく。集中しすぎていたのだろう。気づくと目の前に人影があった。

「ねぇ、きみさ。一人?」

「どこの高校?」

 天が驚いて顔を上げると知らない男の人が2名。私服から一般客なのかOBなのかわからないが、年上っぽい。

「あ、いや……え?」

 突然のことに天は言葉が出てこず、とにかく離れようと席を立とうとしたが目の前にいたのもありすぐに逃げられず手を掴まれた。

「あの!」

「暇ならオレらと遊ばね?」

「は?なにいって……」

「ね、いこうよ」

 グイッと引っ張られる腕。天は慌ててその手を振り払おうとしたが相手の力が強くなかなか振り払えない。どうしよう!怖い!

「あ、あの!無理です!知らない人に触られるのも無理ですし!全て無理です!」

「無理とかひどっ。つかめっちゃ早口じゃん」

「目合わないし、ヲタクっぽー」

「うける」

 なぜかバカにされ笑われる天。確かにヲタクだろう。しかし、だからって初対面でこんな仕打ちある?と天が思考が追いつかずあわあわしていると今度は腰に腕を回されて抱き寄せられた。

「ま、ここじゃ迷惑なるし行こっか?」

 天の背筋は恐怖でゾクリとした。どうしようと何か言わないと、拒否をしないとと思うが、ここで問題を起こせば高校がバレて剣道部に迷惑が……。
 そんな時、天の腕がさらに引っ張られた。

「あかん」

 聞き慣れない言葉にドキリとする天。しかし誰の声かはすぐにわかった。それは今一番聞きたかった声で、でも今は一番会いたくない人の声だった。

 肩で息をする葵がしっかりと天の腕を掴んでいた。

「あ?」

 年上の男にも怯まず、葵は天の腰を抱いていた手を離させるとそのまま相手の手を掴み捻りあげる。

「いででで!」