自分はこんなに翻弄されているのに……と天は情けなくなった。葵みたいに、やるべきことにちゃんと向き合いたい。
 自分のやるべきこと、それは小説。ケイトにも前に宣言した。小説を書き続けると。今書いている自分と葵の出来事を取り入れた物語を完結させるまで、フラフラしない。天は改めて決意を固めた。


 いつもの帰り道。自転車を押す葵と並んで歩く。駅まで送ってもらう道のりで、天は葵に今日の事を決意表明する。

「あのね、安岐くん。私決めたんだ。今書いてる小説を完結させるまで、フラフラしないって」

「小説ですか?」

 葵は天の発言に驚いて聞き返す。そして思い詰めた様子を感じ取ったのか心配そうに聞いた。

「……何かありましたか?嫌なことがあったとか」

「違うよ!ただ……ちゃんと目標を持つことにしたの!」

「ですが、そんなに焦らなくても。別に期限とかあるわけじゃ……」

「ダメだよ!」

 そう言って天は立ち止まった。急に止まってしまった天に合わせて立ち止まり、どうしたのかと下から顔を覗き込むようにする葵に天は真っ直ぐに見つめ返す。

「私、安岐くんみたいになりたい。かっこよくて、目標に一生懸命で、絶対にやり遂げる……だから、私も頑張りたい」

 天の声に迷いはなかった。ただ、それでも葵には応援してほしい。一番そばにいてほしい相手だから。

 天の決意を聞いた葵は驚きはしつつも、その意志の強さに感銘を受けた。

「……そうですか」

「うん!」

「では、俺は赤音さんを応援しますね」

 そう言って葵は優しく笑った。その表情がとてもかっこよくて、天は思わずキュンとなる。しかし、すぐに我に返り言った。

「ありがとう!安岐くん!」

「いえいえ。……あ、でも……」

「ん?」

 何か言いかける葵を不思議に思い、天は首を傾げると葵は言った。