揶揄うように言われた言葉に天の返事は歯切れが悪くなる。それにクスクスと笑い声が聞こえる。なんだか遊ばれている気がして面白くないが……それはそれで楽しいのでよしとしよう。
 そう納得する天に、葵は急に冗談のような言葉をかけてきた。

『あれ?赤音さん、なんで今俺の隣におらんの?』

 これは関西特有のボケなのかと天は考えて、なんて返そうと悩む。でも素直に思ったことを口に出した。

「安岐くんが、迎えにこないからだよ」

『そないなこと言うたら今から迎えに行くで?』

「えええ、大阪から?」


『当たり前やん、どこへでも駆けつける言うたやん?』

 クリスマスイヴの日に言ってくれた言葉を葵が覚えていたことに天は嬉しくなる。ああ、葵の言葉は全て適当ではないのだと、言葉に責任があるのだと信用できる。同時に少し気恥ずかしくもなり、天の方からこの流れを終わらせた。

「なにこれ、ちょっと面白いね」

 葵とのやり取りに天は笑って言う。葵もそれに笑って答えた。

『せやな。……あ、そろそろ切ろか。あんま長電話しとると、ほんまに終われんくなる』

「ん、そうだね」

『ほな、おやすみ赤音さん』

「うん!安岐くん、おやすみなさい」

 天は電話を切るとスマホを胸に抱き目を閉じる。こんな少ししか会話をしていないのに満たされて、でも寂しくて。やっぱり好きだな、早く会いたいなと強く心に思う。

 気持ちを伝えたらもっとたくさん隣にいれるのかなと考えて、天はこの想いを葵に告げると決意し、眠る準備をし始めた。



 冬休み明けの始業式。天はリッカやエマ、伊丹らと久々に会話を交わして、そのまま放課後部活に出る。いつも通り、アカネゾラ警棒と噂される観察をして、剣道場へ向かった。

 定位置となった窓から中を覗くと、葵が部員達と練習をしている最中で天は顔を赤くする。

「あ~!かっこいい!」