『そりゃこっちおるし。敬語使てるとじいとばあに気取っとるなぁって茶化されんねん』

「なるほど。イメージだいぶ変わるね」

『普段の俺と今の俺、どっちが好み?』

 天は葵の急な質問に戸惑う どっちって……と返事に詰まる天。

「ど、どっちも安岐くんだよ」

『せやなぁ。俺も、どんな赤音さんでも変わらんわ』

 ストレートな返しに天の顔は真っ赤になる。葵はその様子が声だけでわかり笑った。そしてそのまま言う。

『っていうか、何で急に電話くれたん?嬉しいけど。用事?』


「ああ!えっとね……」

 思わず声が聞きたくてとか直接話したくてとかいろいろ理由はあるのだが、なんとなく恥ずかしくなりそれは言えない。代わりに違うことを聞いた。

「そっはどうかなって。大阪はどう?」

『地元やしな。こっちの友達にも久々におうたし』

「そっか。いつ戻るの?」

『冬休み終わりになるなぁ。……っていうか、めっちゃ興味津々やん』

「それは……」

 天からの質問攻めに葵は笑う。普段ならここで恥ずかしさから誤魔化す天。しかし、今は違う。天は、誤魔化すのをやめて素直に答える。

「安岐くんに会えないと寂しいから。いろいろ、聞きたくなった」

 葵は驚き、しかし冗談っぽく返す。

『キュンがたりひん?』

「そうだよ」

『小説に支障がでとるん?』

「……ちがう」

『ちゃうの?』

「うん」

『さよか……』

「……うん。あれだね、あんまり声を聞いてると、会いたくなっちゃうな」

 なんとも言えない雰囲気に天が堪えられず、笑って言う。しかし、葵は真剣な声で言った。

『俺も会いたいわ』

 その言葉に天は少し間を置いて反応する。

「ほ、ほんと?」

『なんやの?照れとんの?』

「そういうわけじゃないけど……」