王道なら男性側からしてもらえると嬉しい。でも、恋愛がわからないと言っていた主人公が自分から告白する流れも捨てがたい。迷う天はふと、自分に置き換える。

 葵に告白されたいのか、自分から言いたいのか。

「……ん?あれ?」

 正直どちらでもうれしい。というか、天の場合は葵といると気持ちが溢れて好きと言いたいのに、言えない。でも伝えたい葛藤がある。

「ああ……私、安岐くんのことほんと好きなんだなぁ……」

 自覚するとじわじわと恥ずかしさが込み上げる。しかし、なんだか幸せな気持ちもあって天はニヤニヤした。


 夕飯に年越しそばを食べ、入浴も済ませて天はまた小説を書くことに没頭する。集中すると時が経つのが早く、気がつけば日付が変わっていた。ああ、年明けかと思っているとスマホに通知が入る。画面を見て天は口元がにやけた。葵からだった。

【あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。】

 定番の挨拶だが、嬉しくなる。返事を打とうと思い、少し考えて天は自分から電話をかけた。初めの頃はこの電話のやりとりも自分からなんてできなかったよなと感慨深くなる。ワンコール、ツーコール……

『はい、もしもし』

 聞きたかった声だ。天は嬉しさのあまり思わず声のトーンが上がってしまう。

「あ!安岐くん?あけましておめでとう!今年もよろしくね」

『明けましておめでとさん。こちらこそ今年もよろしゅうな?』
 
 二人で新年の挨拶を交わす。それだけでも天は嬉しくなるのだ。葵も同じ気持ちなのか、声が少し上ずっている気がした。そんな些細なことでさえドキドキしてしまう天の気持ちを知らず、葵は聞いた。

『電話きたから何事かと思ったわ。でも、めっちゃ嬉しい』

「そ、そう?というか、安岐くん関西弁だらけだね」