「こないな特別なプレゼント。ありがとうな、赤音さん」

 葵の一言で天の顔は真っ赤に染まる。ただ方言で喋るだけなのにその破壊力。天は今まで以上に胸がキュンキュンしてしまった。葵の関西弁は彼の素だから、そんな状態でときめくような言葉を投げられると嬉しさもあり抵抗できない。

 そんな天の様子に満足したのか、葵は笑う。

「うん、その顔やわ……可愛ええなぁ……」


 蕩けた声と表情に天はもう限界だった。緊張と恥ずかしさが混ざり合って動けない。そんな中、葵は言った。

「そろそろ終わりにしよか?もう遅いし、帰らなあかんな」

 葵の指が離れる。天は思わず「あ……」と声を漏らした。

「やめちゃうの……?」

 天はほぼ無意識だったのだろう。ただ、離れ難いその気持ちだけで出た言葉。しかし、葵にとっては猛毒。たまらないという表情で天の頬に触れる。

「あかんわ、もう……そない可愛いこと言うて……煽っとる?」

「えっ……煽ってないよ?」

 わかっていない天に葵は苦笑する。そして、そっと天の頭を撫でた。

「この先は、ちゃんとケジメつけてからな?」

「けじめ?」

「そ、ちゃんとしたら……そん時は、止まらんで。覚悟しといてな?」

 葵の言葉に、よくわかってはいないが天は頷く。そして、二人は駅へ向かった。同じ方向の電車にのり、葵が天を家まで送る。お互いに話題はつきなくて、二人で過ごす時間はあっという間で……天の自宅前にきたとき、葵が言った。

「赤音さん」

「ん?なに?」

 首を傾げる天に葵は微笑む。

「今日のこと、忘れんといてな?」

 その言葉に天は先程のことも含め真っ赤なり少し驚いたが、すぐに笑って頷いた。

「ほな、おやすみ」

「うん、安岐くん。メリークリスマス!」

「ん、メリークリスマス」