葵は天の手を取り、指と指を絡ませる。所謂恋人繋ぎというやつで……天の頭は沸騰寸前になった。あわあわと明らかに動揺する天に葵は口元に弧を描くと、囁く。

「ほんまに、隙だらけやなぁ。ええの?こんなことまで許して……なんなら、もっとええことしたるで?何べんだって、どんなことでも……」

「あ、あの……!」

「……って、言ったらどうします?」

 葵の言動に天は頰から耳まで真っ赤になっている。そんな反応を楽しんでいる様子の葵を天は少し睨みつけた。すると、葵はクスッと笑う。

「すみません。ちょっと調子に乗りました」

「もう……!心臓に悪いよ!安岐くん!」

「すみません。何だってすると言われたので、つい」

 額と手を離して謝る葵に天は文句を言いつつも、嫌ではなかったから、余計に恥ずかしくなった。そんな時に、響に言われた“本当に好きならちゃんと気持ちを伝えろ”という言葉を思い出す。

「いや、じゃなかったよ。私……」

 告白は、まだ気持ちが落ち着かず無理そうだ。だから天は今の行為が嫌ではなかったと、自分もうれしかったことを伝える。

「恥ずかしくて、どうにかなっちゃいそうだったけど。安岐くんの関西弁にキュンキュンしちゃうし、あんな近くで見つめられたら……ね?ドキドキしちゃうけど、安岐くんだから、嫌じゃないよ」

「……本当ですか?」

「うん!本当!」

 天は顔を赤くしつつ笑顔で言う。その笑顔に葵は一瞬見惚れたあと、優しく微笑んだ。そして、そっと顔を近づける。

「じゃあ……もっとしてもいいですか?」

「へ!?あ、あの……!」

 突然の申し出に天は戸惑うが、嫌な気持ちではない。だから、天は勇気を振り絞り頷いた。すると……

「ありがとうございます。ああ……関西弁のが、ええんやったっけ?ほな、俺も素で喋るわ」

 葵は悪戯っぽい笑みを浮かべ、天の指に自分の指を絡める。