そもそも、超絶陰キャの天はこれまでクリスマスプレゼントを友達にあげたことはない。世の中では友達同士のプレゼント交換があるのかと初めて知ったくらいだ。

「安岐くん、私もクリスマスプレゼントあげたい!でも……何も用意してなくて……」

「気にしなくていいですよ」

「いや!それじゃあ私の気がすまないよ!……そうだ!前に安岐くんがしてくれたみたいに、何か私にして欲しいことはある?」

「いえいえ、そんな……」

「いいから!私、安岐くんのためなら何だってするよ!」

 張り切る天に葵は少し考える仕草をみせ、微笑む。

「じゃあ、少しわがままを言っていいですか?」

「うん!なに?私に出来ることなら何でもするよ」

「ありがとうございます。では……そこのベンチに座っていただけますか?」

 葵はベンチを指差す。天は頷き、ベンチに座った。すると、葵も隣に座る。葵はジッと天を見つめると、ふっと微笑んだ。その笑みに天はまたドキッとする。

「赤音さん」

「な、なに?」

 葵の言葉に少し緊張する天。葵はそんな天に体を寄せた。そして……

「少しだけ、動かないでもらえますか?」

「う、うん……」


 葵のお願いに天は頷く。緊張しているのか、その目は少し不安そうで。葵はそんな天に顔を近づけ、その額に額を押しつけた。

「あ、あの……」

 天は戸惑いながら声をかけるが、葵は黙って額を押しつけている。そして、至近距離で見つめ合う。その瞳の真っ直ぐさに天の心臓が跳ねた。ドキドキが止まらない。葵はそんな天の様子を察して、愛しそうに微笑んだ。

「赤音さん」

「あ、安岐くん……」

 囁くような声に天はキュンとした。心拍数は早まり、葵への感情が溢れそうになる。そんな気持ちを押し込めて天は言った。

「は、恥ずかしいね……これ」

「そうですか?俺はとても幸せです」