「もっと、よく見える場所に」

 そう言い、手を差し出す葵。天は戸惑いながらその手を取る。

「イルミネーションが見やすい場所があるんです」


 葵はそう言い、歩き出す。天はドキドキしながらその横を歩く。少し目線を下げて葵の顔を見るが、とくに恥ずかしがる様子もない。自分だけが意識しているという事実に、天は少し落ち込んだ。

「ここです」

 そこは天が前に響と夕日を見た丘の上の公園。人はおらず、貸切のそこから駅方面を見ると、イルミネーション全体が綺麗に見えた。

「うわ……すごい……」

「綺麗ですね」

 葵の言葉に天は頷く。キラキラ光る世界。暖かい光に照らされる街。二人だけの空間を天は噛み締めた。そんな天の横で葵は決意を固めて口を開く。

「赤音さん。俺と一緒がよかったと言ってくれて嬉しかったです。赤音さんと過ごす時間は、俺にはどれも宝物です」

「安岐くん……」

 葵の言葉に天は自然と笑みが溢れた。彼の言葉は真摯に自分に向けられているものなのだと、とても実感できて嬉しいから。

「赤音さん、これ……受け取ってください」

 葵は紙袋を渡す。天は中を見ると綺麗にラッピングされた物がそこには入っていた。

「安岐くん、これ……」

「遅くなりましたが誕生日プレゼントと、クリスマスプレゼントということで」

「あ、ありがとう!ほんと……うれしい……開けていい?」

「どうぞ」

 天は素直に喜びながらプレゼントを開ける。綺麗にラッピングされた袋の中から出てきたのは赤いニット帽と白いマフラーだった。

「可愛い……可愛すぎて、私に似合うかな」

「似合いますよ。赤音さんはとっても可愛いですから」

 葵の言葉に嘘はない。それがわかるから天は照れてしまう。こんなによくしてもらって、幸せだなとおもいながら……ふと、自分がクリスマスプレゼントを何も用意していないことに思い至った。