『赤音さん。伊丹から聞きましたが、クリスマス何かする予定でしたか?すみません、俺部活で……』

「いいの!大丈夫!今イルミ見れてるし、満喫してるよ!」

 天は葵が気を使わないように明るく言う。しかし、それでも申し訳なさそうな声で葵が言う。

『赤音さん……イルミって駅前のですよね。一人にさせて、本当に申し訳ないです』

「だから大丈夫だって。それよりすごいよイルミ。もう、めちゃくちゃ大きくて、気合い入れてるって飾りつけ」

『そうなんですか。でも、もう暗いですよ。そろそろ一人では危ないのでは?』

「大丈夫。カップルかなりいるし。危なくないよ。すごい綺麗だからいくらでも見てられるんだよね、イルミ」

 天は明るく話題をふる。葵に申し訳ないとかは感じて欲しくなかった。こればかりは仕方のないことだと自分でもわかっているから。けれど……


「でもね、ほんとはね……安岐くんと一緒がよかったな」

 天が呟いた瞬間、通話口から息を呑む音がし、切れる電話。天は驚きスマホを見る。すると自分のスマホの電池が切れていたことに気づいた。天は画面を見つめ、ため息をつく。

 何もかもタイミングが悪いなと、天は呆れ、少し笑えた。使い物にならないスマホをポケットにしまい、顔を上げる。視界いっぱいに広がる鮮やかな世界。天は時間も忘れて魅入ってしまう。

 このキラキラした世界でなら、自分も相応に可愛く見えるのだろうか……などと天は考えて嘲笑した。そんなこと考えても答えはでない。わかっていることは、このキラキラした世界を葵一緒に見たかったという事実のみ。

「安岐くん……」

 そう、漏れた声。次の瞬間、天は後ろから抱きしめられた。相手の頭が肩に埋められる。突然のことに驚き、顔だけ振り向く。すると、そこにはーー

「安岐くん?え、なんで?」

 天が会いたくて仕方がなかった葵が、そこにいた。