緊張して口籠もる天を葵は見つめる。天も自分で誕生日お知らせとかイタイ子だなと思い葵の様子をチラッと窺うが、葵は目を丸くしてとても驚いている表情をみせた。

「え、あの……赤音さん、今日が誕生日?ほんまに?」

 思わず方言がでる葵の様子から相当驚いてるのだなと天は察して、少し嬉しくなる。

「ほんまだよ」

 天は軽く笑みを浮かべて悪戯っぽく葵の方言を真似て肯定する。すると葵が頭を下げて謝罪の言葉を口にした。

「すみません!俺……知らなくて何も準備できてなくて……」

 申し訳なさそうな表情の葵に天は首を横に振り否定した。そして、顔をあげた葵に一歩近づく。


「いいの、気にしないで。だって、今知ったんだから仕方ないよ」

「……でも」

「それにね私、普段から安岐くんにはたくさん嬉しいことしてもらってるから十分だよ」

 天はニコニコとそう言うが葵は納得していない様子で、何か自分にできることはないのか天に尋ねた。

「このままでは俺が納得できません。ちゃんとした物は後日お渡ししますから、今何かして欲しいことはないですか?」

「ええ……んー、そんな気負わなくても。おめでとうって言ってくれるだけでいいのに」

「いえ、それ以外でも何か言ってください。俺にできる範囲で叶えますから」

 葵の真剣さに天は困惑しつつ、して欲しいことを考える。普段できないこと……そういえば、恋愛鉄板ネタのお姫様抱っこ、あれは経験したことがないから実際にできれば小説を書く時に具体的な内容が盛れるなと思って、何も気にせずそれを口に出した。

「お姫様抱っこがいいな。小説のネタにもなるし……って、待って。違う、ごめんっ!今のは忘れて!」