伊丹は笑って答える。天は今までの葵とのやりとりを思い出して、一緒にいて楽しかった時間や、胸が高鳴る瞬間があったことを思い出した。同時に自分だけのものにしたいと素直な欲求がでたことも。

「リッカ、エマ、いたみん……これが、恋ってこと、なの?」

 天は、3人を見つめて言う。まだ戸惑いはあるようで、不安に瞳が揺れていた。

「あんたが、ときめきを他の人と分かち合いたいって思わないんだったら、そうなのかもね」

「うん。彼のことを考えて天がそう思うなら、恋って認識でいいんだよ」

 エマとリッカの言葉に伊丹が続ける。


「共有から独占になったなら、それはもう恋だろ」


「……そっか」

 天は小さく呟く。そしてようやく納得した顔をする。まるでパズルの最後のピースを嵌めるようにピッタリとはまった感覚だった。

「みんな、ありがとう。なんかまだ実感わかないけど……」

 天は照れくさそうに笑いながら頬をかいた。脳裏には瑞穂が思い浮かぶ。
葵を同じ推してた同志。もう話を共有できないなと、本音を瑞穂に伝えないとなと思う。
 もしかしたら非難の目で見られるかもしれない。それでも、内緒にしておくことは天にはできない。瑞穂は天にとって、葵を推せる大切な同志なのだから。

「なんか……無性に安岐くんに会いたくなっちゃったな」

 瑞穂のことを考えていたら、葵のことも頭に浮かぶ。自然と口から漏れたそれに、リッカやエマや伊丹は顔を見合わせ、微笑んだ。

「会いに行きなさいよ」

「うんうん。素直が一番だし、天のいいところはそーいうところでしょ」

「今日は部活オフだけど、安岐はいつも軽く稽古をしてるぞ。行ってきたらどうだ?」

 3人は天の背中を押す。天は感謝して放課後に剣道場に向かうことにした。