葵のクラスにつくと縁日だからか小さい子もいた。その中に大人の男が2人真剣にスーパーボールすくいの前で並ぶ。

「多くとったほうが勝ちだ」

「ええで?まぁ、結果はみえとるけどな」

「おまえの負ける結果だろうがな」

「現実を知って泣けやボケ」

 口汚い罵り合いのジャブを互いにうち、2人同時にポイでボールをすくっていく。しかし、あっという間に空語のポイは敗れた。

「なんでだ!!」

「そら、そないバーンと無理やり水に突っ込んだら破けるやろ。女の子の扱いと同じで、そーっと優しゅうせなあかん。ああ、すまんなぁ?モテたことないやつにはわからんかったか」

「くうううう!なんだこいつ!」


 静は何個もボールをとり、その後のゲームでも勝ち続け、結果空語の負けとなった。

「静さんすごいですね」

 (そら)が尊敬の眼差しを静に向ける。それに気を良くした静がポーズをとりながら答えた。

「俺はなんでもできる男やからなぁ」

「くそう!こいつ強いぞ!」

 空語は悔しそうだが負けを認めずにいる。そんなことをしてれば目立つので、人だかりができていた。その間を通って葵が呆れた顔をしてやってくる。

「いったい何してるんですか」

「あ!安岐くん……」

 天は葵に現状を話す。聞いた葵は大きなため息を吐いて天に頭を下げた。

「赤音さん。兄がご迷惑をおかけしました。後でよぉーく、言っておきます」

「なんでや葵。兄ちゃん遊んどるだけやで。こいつで」

「おい!おまえ!本当にイラつくやつだな!」

「そりゃイラつくこと言うてるからなぁ」

 静は空語を煽りつつニヤニヤする。葵は、はぁとため息を再び吐いて静に話しかけた。

「とにかく、他の方に迷惑ですから出ていってください」

「ええ?まだええやん」

「出てけや」