天は自分がついうっかり家で葵のキュン話を漏らしてしまっていることを改めて悔やみつつ、空語に釘を刺す。しかし空語は何も聞いていない。

「それで?その兄貴が俺の妹にカツアゲか?」

「ナンパやな」

「はぁ?なんだこいつ。頭おかしいな」

「おかしいんはきみや。ああ、すまんなぁ同じ人間おもて話してたわ。獣か」

 静につっかかる空語。それをさらっと受け流しつつも嫌味を忘れない静。

「お兄ちゃん!やめてよ!」

 2人を止められそうなのは自分しかいないと、天は兄の腕を掴んで制止する。しかし空語はその腕を振り払い睨みつけた。

「天、おまえは騙されてる。こんな関西弁の嘘くさい笑顔のやつにまともな輩はいない!ただの変人だ!」

「俺は変ちゃうで。イケメンやからな」

「うるさい黙れ!」

 何やら2人はどちらも一歩も譲らない。兄である空語の面倒さは承知してるが、まさか静までこんなタイプだとはと天は1人ヒヤヒヤしていた。

「お兄ちゃん、いい加減にして!静さんもやめてください」

「嫌だね、こいつにわからせてやる。どっちが上かをな」

「ええよ〜、ほんなら勝負する?ちょうどええことに弟のクラス縁日やっとるんや。そこのゲームでどっちが上か決めよか」

「は!望むところだ。吠え面かかせてやる」

「へ!?ちょっと、ええええ?」

 話が勝手に進み天はお互いバチバチする2人の後を必死で追いかけた。