文化祭当日。一般客も入り賑わう中、天のクラスのカフェは大盛況だった。天はバックヤードでパンケーキにデコをしながらため息を吐いた。

「天おつかれ〜」

 接客途中のリッカが天の背をポンと叩く。

「疲れた〜」

 そう言って天も笑いながら返す。文化祭では飲食系の出し物は人気で時間いっぱいまで運営し、そのあと片付けとなるのだが、一般客はこの時間まで楽しんでいるものも多いので、なかなかの忙しさだった。

「天のパンケーキ好評よ。さすがヲタク、凝らせると右に出る者はいないわね」

「まぁね」

「でももっと早く完成させなさい。お客の回転率が悪くなるでしょうが」

 得意になって天がニヤニヤすると、リッカはすかさずツッコむ。天は苦笑いをして残りのパンケーキを完成させるとリッカに渡した。

「ほい、頼みますね接客のプロ」

「任さない」

 リッカはニッコリと営業スマイルでお客のところにパンケーキを運ぶ。さすがバイト先で接客業に慣れているだけはあるなと天は感心した。自分には無理だとも同時に思う。接客とか、向いてない……そう思うから。

「おー、赤音。そろそろ休憩じゃないのか?」

 そう声をかけてきたのは伊丹。こちらの男も接客に慣れているのか、もともと陽キャだからか、とても接客が上手くて天は内心少し悔しく思う。イタミンのくせに。

「そうよ、天休憩とんなさいよ。あんた朝からずーっと裏にこもりっぱなしじゃない」

 接客を終えたリッカが戻ってきて天に詰め寄る。天はあかさらまに面倒そうに顔を顰めた。

「でもリッカもまだ接客当番だし、エマちゃんは写真部の方だし。ぼっちで文化祭巡りは辛いって。それに……今日はお兄ちゃんもくるっぽいし」

 天は下手に出歩いて兄に会いたくないと伝える。リッカも苦笑いで「あー……」と納得した。

「あのお兄さんか」

「え?なになに、どんな?」