リッカ達の作業する席のところに戻ってきた天に2人は尋ねる。心配してくれているのだと天にもわかる。しかし、自分でもよくわからない気持ちをペラペラ喋る気にはならない。

「大丈夫だよ」

 そう精一杯笑えば、リッカとエマの顔は益々険しくなった。そこにちょうど伊丹がやってきた。

「よお、どうした?そんな顰めっ面して」

「ちょっと伊丹。安岐葵の周りにいる後輩の子知ってる?」

 リッカ達が後輩のことを聞くと伊丹は頷いた。

「不破瑞穂とかいう子だろ?毎日見にきてるぞ」

「え!?」

 天は驚く。リッカとエマも口を開けてマジかという顔をした。


「いやー、熱心だよなぁ」

 わかっているのかいないのか呑気な伊丹の話を聞き、リッカとエマは天を急かす。

「ちょっと天、あんたどうすんの?」

「なにが?」

「その瑞穂とかいう後輩が毎日来てることに対して天、あんたはどう思うわけ」

 リッカからの質問に天は首を傾げる。エマもうんうんと頷いている。

「いや、別に……だって見に行きたいんなら来てもいいでしょ?」

「あんた、そんな悠長なこと言ってると取られるわよ!」

 リッカの剣幕に天はのらりくらりと返す。

「だって安岐くんのことを推してる、いわば同担だからね。いいものは分け合わないと」

 そう答えるとリッカとエマはため息を吐いた。伊丹も肩をすくめている。天の気持ちは嘘ではない。しかし少なからず、瑞穂が羨ましいという感情があるのは事実だ。自分も同じようにすればいいのに、今まで通りに。けれど、そんな気に天はなれなかった。

「まあ、天がいいならいいけど」

 エマがそう言ってリッカも頷いた。天は2人の様子に納得してないけど承諾してくれたと安堵した。