瑞穂の褒め言葉に葵がどこか嬉しそうに答えるので、瑞穂も嬉しくなって話し続ける。

「はい!かっこよくて優しくて、ずっと憧れなんです」

「それは、ありがとうございます」

 2人の会話を聞きながら天は、まるでドラマでも見ている気になった。完全に蚊帳の外、モブの立ち位置。
 葵のことをあんなに輝いた目で見つめて、あれだけ語れる瑞穂は天の中では同士だ。推しが目の前にいるのだから、そりゃはしゃぐだろう。天だって、キュンの時は葵に食いついてキュンセリフをメモったりする。

 だから、一人話に加われなくても気にはしない。寧ろこの時間で小説のプロット作りや妄想を滾らせられるので、むしろありがたかった。

 でも、ほんの少しだけ羨ましいとも天は思った。隣で楽しそうに会話をして、いつもならそこは自分の場所なのに……そんな考えが頭を過ぎると天はハッとして首を横に振り、思考を消した。

 まるで葵が自分のものなのにというような黒い感情。天は脳内で否定する。自分にとって葵はキュンをくれる貴重な存在で、男友達で、一緒にいて楽しい相手で……そう、楽しい。とても……葵の隣は居心地がいいのだ。それが友達だからなのか、キュンセリフをくれるからなのか、はたまた別の理由なのか……天にはわからない。

 ただわかることは、この関係を失いたくないということ。


 天は葵の横で可愛らしく話をする瑞穂をぼんやりと眺めて、困ったように眉を下げ微笑んだ。それは自嘲するような笑みだった。いつのまにか欲張りになったんだなと何かを少し自覚して、天は2人の後をついていった。


「それでは、2人とも気をつけて帰ってくださいね」

 駅につき、葵が微笑み声をかける。すると瑞穂が「あ、あの」と切り出す。瑞穂の声に天と葵が顔を向けると瑞穂が恥ずかしそうにモジモジしながら口を開いた。

「また、部活を見学しに行ってもいいですか?」