「それでは中でじっくり観察していってください。そちらの方も」

「は、はい。お邪魔します」

 葵の言葉に天の隣にいた女子生徒も頭を下げる。

「赤音さんのお知り合いですか?」

「え?えと、今さっき気持ちをシンクロさせたと言いますか……」

 葵に質問され天は慌てた。そういえば名前も名乗ってないし聞いてもいない。はしゃぎすぎてただけに恥ずかしかった。女子生徒も察したのか「あの……」と切り出す。

「私、一年の不破(ふわ)瑞穂(みずほ)といいます」

 ぺこと頭を下げる瑞穂に天は、素直に可愛いなと感じた。葵よりも背が低く、パッチリ大きな目とウェーブのロングの栗色の髪がよく似合っている。単純に可愛い。見た目だけでなく雰囲気もふわふわ。おまけにふわふわな子は名前もふわふわ!と天は納得しつつ、葵と並ぶ姿をみると葵よりも小さいからか、お似合いに見える。

「さっきの動きかっこよかったです」

「ありがとうございます」

 そんな普通のやりとりでさえ、小さな2人がやると微笑ましい。瑞穂は喜びやら楽しいやらの時の気持ちが表情によく出ている。リアクションとか受け答えも可愛いなと天は思った。

 その後一緒に葵の剣舞を見たりして、その度に隣でイイ反応をする瑞穂が天には益々可愛く見えた。なんというか、例えるなら小動物が両腕をいっぱい広げて「抱っこ!抱っこ!」とせがむようなそんな可愛さ。

 なんとなく、自分には真似できないそれを少し羨ましく思いながら、天は葵の姿を見つつ同じ気持ちを共有できる瑞穂との会話を楽しんだ。