「当日楽するタイプの部活だな。じゃあ当日いろいろ回れるな」

 伊丹の言葉に天は首を横に振る。

「私は……当日はクラスのカフェの裏方で忙しいかな」

 天がそう答えると、リッカとエマがニヤニヤと笑い出す。その2人の表情に天は嫌な予感しかしない。そして、それは的中するのである。

「安岐葵と一緒に回れば?」

「え?なんでそうなるの!?」

「だって、あんた安岐くんと仲いいじゃない?」

「……っ!いやいやいやいや!」

 2人の言葉に天は顔を真っ赤にして全力で否定する。意識してまともに顔も見れないのに、それは無謀だと天は思う。しかし、そんな天にエマがニヤリと笑う。

「安岐葵なら喜ぶと思うけどなぁ」

 その言葉に天は葵の笑顔を思い出し、さらに顔が熱くなるのを感じたのだった。これ以上揶揄うのは可哀想だと思ったのか、そこですかさず伊丹が剣道部の出し物について話出す。

「当日は道場が開放されて剣道部が剣舞するんだ。今年は安岐が中心になってやってるな」

「え!そうなの?すごい」

 天の言葉にリッカとエマも頷く。

「手こんでるじゃないの剣道部」

「まあ文化祭で剣道部を見にきた中学生向けにな。興味もってくれたら来年入部してくれるかもだろ?」

「なるほど。安岐葵中心ってことは、彼が考えたの?剣舞」

 エマの言葉に伊丹は頷く。

「そうらしいぞ。俺はまだちゃんと見たことないが、剣道部でも話題になってるな」

 その言葉にリッカもエマも興味深々だ。もちろん天もだ。

「見てみたいなー……」

「んじゃ、今日あたり部活の練習見にくれば?当日は混むかもしれないし、今なら文化祭準備で安岐のファンの見学もいないから独占できるぞ」

伊丹が気を利かして誘う。その言葉に天は「え……」と固まる。葵の剣舞を見たいが、それだと葵を変に意識していることばれるかもしれない……と。