「兄がまた赤音さんに会いたいと言っていたので、伝えるようにと。……どうかしましたか?」

「へ?いやいや?なんでもないよ」

 天は葵の顔が見れない。というか、目を合わせられないでいた。葵も気にしてはいるが、彼以上にリッカとエマと伊丹の3人が顔を見合わせて驚く。

「あれはなんでだ?今まで普通に顔見れてたよな?」

「あれは、緊張かな?単に」

「え、2人の間に緊張するようなことが起きたってこと!?」

 コソコソと話す3人。そんな中、天の心情は穏やかではなかった。

 夏休み中に聞いた葵の本音、それと共に自ら抱きしめた行動。後々考えてなんだあの大胆な振る舞いはとなり、葵を意識しすぎて、ただいま目を合わせられなくなっているのである。

「あー!安岐くん私準備が忙しいからもういくね!」

「はい。頑張ってください」

 微笑む葵に天は顔を背けて、そのまま作業へ戻る。その光景をリッカ達3人はニヤニヤと眺めていた。


 昼休み。天はリッカとエマとそこに伊丹も加えて昼食を共にしつつ、文化祭でのクラスや部活の出し物の話を始める。

「うちのクラスのカフェ繁盛するかなぁ」

「客をどんどん入れて売り上げ伸ばすわよ」

「リッカ燃えてるね」

「当然。バイトで培ったスマイルを披露するわよ」

 そう言いリッカがわざとらしく笑う。それを見て他の3人も笑い、また話題が広がる。

「エマちゃんは写真部の展示だよね」

「え、高塚写真部だったのか」

「そーだよー。今度剣道部の写真も撮らせてよ」

「おう、いいぞ。それにしても弓場も高塚もしっかり文化祭のこと考えてるんだな。赤音は?」

 伊丹が弓場リッカと高塚エマの話を聞いて感心しながら、天に話を振る。

「私は文芸部だからね、オススメの本の紹介ポスターとかそんなん。展示ゾーンに掲示されるよ」