そんな天に静は少し困ったように笑うのだった。そして、また話を続ける。

「天ちゃんは本当ええ子。これからも葵のこと頼むで」

「はい」

 静の言葉に天は笑顔で頷いた。



 カフェを出て天と静は2人並んで歩く。葵の話題を中心にいろいろ話をして、盛り上がっていた。

 側から見るととても仲良さそうな2人。そんな2人の間に割り込む人影。

 天と静は驚いたが、それが葵だとわかると、自然と笑みが溢れる。

「安岐くん!」

 天は嬉しそうに葵の名を呼んだ。葵はそんな天を見て少し眉を下げて微笑むと、静に向き直る。その顔は天に向けたものと違い冷たい。

「兄さん、何してるんですか?」

「何って……お茶しとっただけやん。つかなんやねんその言葉遣い。きどっとるな」

「……関係ないでしょう」

 静の言葉に葵は少し目を伏せる。そしてすぐに天の手を引き歩き出した。急に引っ張られた天は驚きながらも、その勢いに身を任せる。

 静はそれを優しい顔で見送りながら、2人とは逆方向へ歩き出した。