花火大会以降3日経つが葵から連絡はない。あの日の葵の顔が、いつもの穏やかな笑みではなく、目を見開いて強張っていた。まるで信じられないというような、そんな顔。

「気になる……」

 (そら)は自室でベッドに腰掛けながらスマホで小説を書くが、それも進まない。それほど葵のことが気掛かりだった。それならば、いっそ会いに行ってみることにした。
 ネタ集めと称して、学校で部活中の葵に会いにいこうと天は考える。葵の剣道姿も見れるし一石二鳥だと、この時までは呑気に考えていた。

 しかし、学校に着いて葵を探し始めてから天は言葉を失う。

 いつも通り剣道場にいた葵は、いつもと違う雰囲気で必死に素振りをしたり練習に精を出している。今まで天が見てきた葵の姿ではなかった。鬼気迫るようで、でもどこか苦しんでいるような表情の葵に、声をかけることはもちろん近づくことなどできない。

 ーーこんな安岐くん……見たことない。

「っ!」

 そんな時だ。葵と目があったのは。しかし、それは一瞬のことですぐに逸らされる。そしてまた練習を始めた。

「なんで……?」

 天にはわからなかった。どうしてここまでして頑張るのか。あんなにも苦しそうに剣道をする葵を見たことがないし、どんな理由があるのか想像もできない。

 それに目があったのに逸らされた事実が天の心を抉る。呆然と剣道場の外から眺めていた天に気づいた伊丹が葵に声をかけ、葵は天のもとにやってきた。

「あ、あの……大丈夫?安岐くん」

「何がですか?」

 どこか冷たいその声に天は小さく震えた。いつも通りの葵であるはずなのに、いつもと違う気がする。いつもより余裕がなさそうで苦しい表情を見せる彼に何を言えばいいのかわからず、天は言葉に詰まる。しかし、葵はそのまま続けた。

「俺のことなんて気にしないでください」