安心したように笑う葵を見て、天も微笑む。そして葵は天の浴衣姿をジッと見つめた。今度は逆に天が恥ずかしくなる。

「な、なに?」

 天の問いに葵は微笑み返した。

「可愛いからつい……よくお似合いです」

 そう言われた途端、天の顔は真っ赤に染まる。そして逃げるように葵を急かして花火大会の会場へ向かった。
 この胸の高鳴りがなんなのか天にはわからない。でも、今だけはそれでもいいと思ったのだった。

 2人は屋台を回り、たこ焼きやかき氷食べたり、射的や輪投げなどをして楽しんだ。花火の打ち上げ時間が近くなると2人は少し小高い丘へ登ることにし、歩きながらいろいろな話をする。

 天はここにくるまで悩んでいたことなど忘れているのかというほど、いつも通り葵と接していた。それほど、葵との時間が楽しく、余計なことなど考える余裕がなかった。



「赤音さん、いよいよ始まりますね」

 葵がそう言って天に笑いかける。

「うん、楽しみだね!」

 天は笑顔で返しながら考えた。屋台でも天の好きなものを優先し、歩く速度も天に合わせた葵。人にぶつからないように、壁になってくれたりもした。今日だけでも葵の優しさが嫌ってほど伝わる。その度にかっこいいなとときめく自分がいた。


 葵は本当に、こんな自分を……と天が見つめると葵と目が合う。

「赤音さん……俺……」

 そんな葵の言葉に天はドキッとする。そして次の瞬間ーー。ドン!という大きな音と共に空に花が咲く。2人は空を見上げた。綺麗な花火が夜空に咲いて散っていくのを静かに見つめる二人だったが、葵が天の手に触れる。

「っ!」

 突然のことに驚いた天だったが、花火に見惚れるフリをしてそのままでいた。

「……綺麗ですね」

「うん……すごく……」