そんなやり取りをして、電話を切ると天は大きく息を吐いた。そしてそのまま布団に倒れ込み、顔を枕に埋めて悶える。2人、2人きり。前にも葵とは2人で出かけたことはある。でも、今とは状況が違う。それくらい天にもわかっていた。

「あー、もう!なんで私こんなに動揺して……」

 そうは言うが、天はわかっている。葵のことを意識していることを。2人で出かけるという行為自体に戸惑っていることを。

「こんなの、安岐くんのこと好きみたいじゃん……違うのに」


 天は自分の気持ちをまだ認めていない。いや、認められないでいた。絶対に、ありえないと決めつけているから。

「どうしよう……」

 天は悩む。これはデートなのか、葵は本当に本気で?自分を?と。今まで葵はキュンの提供をしてくれているとばかり思っていた天。しかし、先日の彼の発言から、もしかしてと考えてしまう。

 もしそうなら、葵は自分の何がいいのかと天は疑問だらけだった。

「私なんかの何を……」

 以前にもこの話題になったなと天は思い返す。あの時、葵はキラキラ女子の中からわざわざ天を選んだ。“俺から逃げないで”と約束を取り付けてきた。
 その言葉通り、離れないといってくれた葵から逃げずにいるが、それがまさか友情ではなく、こんな……。

 そこまで考えて天は1人で顔を赤く染める。ありえないとわかっているのに、どうしようもなく苦しい。

 落ち着け自分。自惚れるな。自分相手にそんなことがあるはずがない。

 ここまで天が頑なに認めない、否ーー認められないのには理由があった。

 天は小学生の時に友達に言われたことを思い出す。

 人より少し背が高い天は、その頃は普通に恋愛に対して憧れをもっていた。クラスのかっこいいといわれる男の子にときめいたことだってある。