【安岐くん!全国優勝のお疲れ様会をしようよ!】

 天はメッセージを送るとやり切った感で満ち足りていた。まだ何も決まってないが、誘えたという事実は変わらない。すると、葵から着信がくる。天は驚きつつも急いで通話ボタンを押した。

「もしもし?安岐くん?」

『あ、赤音さん。思わず電話をかけてしまったんですが、大丈夫ですか?』

 葵の声が少し上擦っている。慌ててかけたのに間違いはないのだろう。天はおかしくなり、少し笑った。

「大丈夫だよ。どうしたの?」

『メッセージじゃなくて直接言いたくて……赤音さん、お疲れ様会の予定ってもう決めてます?』

「いや、まだだけど」

『それなら、花火大会に行きませんか?』

 花火大会というワードに天の脳内は鮮やかになる。楽しそうな夏イベント、これは小説のネタにもなるしみんなでワイワイ盛り上がるのに適している。

「いいね!みんなで屋台まわるの楽しそう」

『違いますよ、赤音さん。俺とあなた、2人で行きましょう』

「え?2人?」

『はい、2人です』

 天は予期せぬ葵の発言に、その言葉を反復して、理解すると顔を赤くした。

「え!えと……な、なんでまた?みんなで行っても楽しいと思うんだけど」

 天はわかりやすい反応をして、通話の向こうで葵が小さく笑う。そして、天が反論できないよう、言葉を紡いだ。

『頭ん中、俺でいっぱいにするって言ったでしょ?』

「う……」

『なので、俺と行きましょう?花火大会。2人で』

「………………」

『赤音さん?』

 返事をしない天に葵が呼びかける。そこで天はようやく口を開くことができた。

「……行く。2人で」

『……楽しみですね。時間とかはまた追々決めましょう。それでは今日は、おやすみなさい』

「うん、おやすみ」