興奮気味に話す天。葵はそんな天に眉を下げながら口を開く。

「かっこよかった、ですか……」

「うん!とっても!」

「そうですか……ありがとうございます」

 葵は穏やかに笑ってみせるが、内心複雑だった。かっこよく見られたいのは事実だが、面と向かってかっこいいと言ってもらえることは嬉しくもあり気恥ずかしくもあった。

 そんな葵を気にするでもなく天は更に続ける。

「それにね?応援しててすっごく楽しかったんだぁ。安岐くんが頑張ってる姿みてたら私も頑張ろうって思えてきてさ」

「それは……小説ですか?」

「そうそう!今日のかっこいい安岐くんのときめきを読者に提供すれば皆が虜になるよ!」

「それはキュンの?」

「もちろん!キュンの!」

 楽しそうに話す天に葵も笑う。そこへちょうど、響が二人の間に入って天の肩を抱く。

「よぉ、いちゃついてんなよなここで」

「響さん!ちょ、なんでくっつくんですか」

「なんだよ恥ずかしがるなよな」

「霞ヶ浦さん、赤音さんから離れてください」

 天を揶揄う響に葵が静かに怒りながら天の肩を抱く響の腕を力づくで外す。

「なんだよ安岐、お前も抱きつきたいのか?」

「そういう話ではありません」

「素直じゃねぇなあ」

「霞ヶ浦さんには関係ないです」

 一触即発な雰囲気の二人に天はオロオロする。その様子が笑えたのか響は口元をニヤリと上げ、葵に言う。

「今回は俺の完敗だ。それは認める。けどな、次は俺が勝つ」

「……望むところです。俺も負けません」

 不穏な空気はなくなり、これが男同士のライバルのやり取りかと天が眺めていると、響がもう一度天の肩を抱いて言葉を紡いだ。

「まあ、まだまだ諦める気はねぇけど?安岐に泣かされたら、俺のところにこいよな」

「えっ、ちょっ……」