審判の判定に葵は面を外して、息を整える。そして、客席にいる天の方を見上げる。そこには、すっごく嬉しそうな天の笑顔があり、葵も心底うれしそうに微笑み、天に向かってガッツポーズをする。

「やったね!安岐くん!」

「赤音さん、やりました!」

 2人は周りの歓声も聞こえないぐらいに喜び合う。そんな仲睦まじい姿に響は自嘲する。

「全然入る隙ねぇじゃん」

 葵にきっちり負かされた悔しさを噛み締める響。けれど、本気のぶつかり合いに清々しい顔もしていた。


 表彰も全て終わり、ロビーで天は葵を待つ。リッカとエマも葵と響の白熱した試合のことを感動したように話していた。

「さすが、霞ヶ浦響は強かったわね」

「接戦だったしね。でも、最後の安岐葵はすごかったよ。あれはファンが増えそう」

「天ー?いいの?安岐葵とられちゃうわよー?」

 リッカのニヤついた表情と言葉に天は考えつつ、にこやかな顔をする。

「やっぱり安岐くんはキュンの最高の提供者だって証明されたよね」

「あー、こりゃダメだわ」

「天は相変わらずだね」


 呆れる2人。ちょうどそこへ帰り支度を終えた葵と伊丹がやってくる。天達に気づいた伊丹が手を上げ、その横で葵が天に目をやる。

「お疲れ様、いたみん」

「やるじゃないの」

「うんうん、かっこよかったよ」

「ありがとうなぁ。まあ、団体もいいとこまでいったし。なにより安岐が全国一位になったしな。めでたいことに変わりはない」

「うん、ほんとに。安岐くん頑張ったもんね」

 嬉しそうに天は笑う。そんな天をみて葵も微笑む。伊丹とリッカとエマが気を利かして少し離れた場所で話すと、葵は天に改めてお礼を伝える。

「赤音さん、本当に応援ありがとうございました」

「ううん!でも、本当感動した。安岐くん、すっごくかっこよかったよ」