葵が笑顔でそう天に言えば、天はスマホをみて少し慌てた。そして二人にじゃあねと告げて観客席へと歩き出す。

 残された葵はその背中を見つめることしかできないでいた……。

「あーあ、ノロマで嫉妬深い野郎に天との時間を邪魔されちまったわ」

 響が煽るように言えば葵がまた響を睨む。しかし、響は余裕そうに鼻で笑う。

「安岐、俺はこの全国で優勝して天を彼女にする」

「……霞ヶ浦さん、いったい何を言っているんです?」

「天とそういう話になってんだよ。悪いな、おまえのお気に入り俺も気に入ったんだわ」

 響は葵に挑発的に笑う。そんな響に葵は冷静に返すが、内心穏やかではない。

「そうですか……。でも、俺は負けませんから」

「はっ、そうこなくっちゃな」

 静かに互いを牽制し合う葵と響。そんな二人の会話を知ることなく、天はリッカとエマの待つ客席へと足を進めたのだった。


 大会が始まる。さすがに全国の強豪が集まる中で、葵と響の高校は団体戦ではお互い当たる前に敗北した。勝負は個人戦になる。互いに上り詰め、葵と響は決勝戦でぶつかる。


「やっぱ俺の相手はおまえだよな。吠え面かかせてやるよ安岐」

「こっちの台詞です。負けませんよ、霞ヶ浦さん」

 葵と響はバチバチと視線で火花を散らす。そんな2人を見て客席から天もドキドキする。

 決勝戦開始の合図に先に仕掛けたのは響だった。素早い技の連続攻撃で葵を攻めるが、葵は冷静に対処していく。しかし、響の攻撃スピードが徐々に上がり、葵は防戦一方になる。

「ほらほらどうした?もう終わりか?」

「くっ!」


 お互いテクニックに加えスピードで攻めていく。目で追えない技の繰り出し合い。白熱する試合に天も目が離せないでいた。