（初音ちゃん……）

初音は真っ青な顔をして震えていた。震えながら必死に祈っている。まるで無実の罪を着せられたまま裁判で判決を待つ人のようだ。尋常ではないほど彼女は緊張している。それがアイは心配でたまらないのだ。

「それでは、今夜のFステのトップを発表します。今夜のトップは……弦音アイ！！」

歓声と拍手が沸き起こる。アイはまたアーティストのトップに君臨することになったのだ。司会者が勝者に与えられるトロフィーをアイに渡し、優勝したことのコメントを求められる。

「えっと、私ーーー」

アイが話そうとしたその時、バタバタと大きな音が響いた。振り返ると初音が走ってステージを降りていくところだった。



アンドロイド歌手という特殊な立場にいるアイも人と同じように家が存在する。アイの所属する事務所が与えてくれた高層マンションの一室で、アイはベッドの上に横になっていた。アンドロイドに睡眠や食事は必要ないのだが、アイの部屋には必要最低限の家電などが揃えられている。