この世界にはたくさんの音楽が日々生まれている。素晴らしい音楽たちは後世まで語り継がれ、未来を生きる人たちの心を震わせている。

しかし、そんな素晴らしい音楽を生み出した人はこの世界にはもういない。今いる歌手たちもいずれは歳を取り死んでいく。それは、人が決して抗うことのできない運命である。

そんな運命に抗うために作られたのがアイである。永遠に生き続け、素晴らしい歌を世界に届ける歌姫。彼女は一年ほど前に作られたばかりなのだが、その存在は世界中で知られている。彼女はFステに初出場した際に頂点に君臨したためである。

「〜♪」

アイは歌う。歌はアイにとってたった一つの生きる道であり、心から愛しているものだ。歌っている時、アイは心がないはずなのに胸の中が温かくなる感覚を覚える。

歌っていると前方から歩いてきた人とぶつかってしまった。アイはよろけて壁にぶつかり、アイにぶつかった少女は床に尻もちをついてしまう。

「ご、ごめんなさい!」